受験生にも役立つ
保護者のための大学受験講座
Epigram002
「苦手科目を指摘する」は、行なってはならない!

こういう副業は如何でしょう、1枚の紙切れを見せられ、「ここに数字が並んでいるんですが、この中で一番低い数字とその次に低い数字を赤丸で囲んでもらって、その数字をもう少し高くするように言ってください」と頼まれます。そこには47.5だとか、55.0とか、63.8、54.2、66.4などと、いくつかの数字列が並んでいます。当然、あなたは47.5と54.2を選んで、この2つの数字が書いてある欄に眼を通し、「数学と国語、この数字をもう少し上げてください」と言えばよいだけのことです。これで報酬が貰えるなら、こんな簡単で楽な仕事もありますまい。だれにでもできます。いや今、流行りのAIなら瞬間ですね。
ま、これが学校の教師や予備校の講師、さらには学習アドバイザーとか呼ばれる人たちがやっているとしたら、詐欺でしょうが、実はこれに近いことを、皆さんはしていないと言い切れますか?
お子さんの苦手科目の指摘は、一番やってはならないことです。二重の意味で、です。
まず、そもそも苦手科目を自覚していないお子さんはいないということです。一番よくわかっているのは、彼ら本人です。苦手なことを人から指摘されて、「そんなことわかってますよ」、と裏声で反撥したことありませんか? 他人との比較に否応なしに曝されているお子さんなら、なおのことです。彼らは十分に自覚しているのです。全くその原因や理由に遡及することなしに、それを指摘することは、勿論、“善意”なのでしょうが、端的に間違いです。ますますやる気を喪います。
次に、苦手科目の勉強は、苦手なんですから、そもそも主体的・能動的に取り組めない。しかも、なぜその科目がうまくいかないのか当人にもわからないので、まったく勘違いした学習法に走る可能性が極めて高い。ますますその科目が嫌いになって、自信を喪う。要するに苦手科目の学習は、百害あって一利なし、です。ではどうするのか?
どうかお子さんの成績の中で、一番得意な科目を指摘して、それを褒めちぎってください。その科目は何も“主要科目”と称される数学や英語でなくても構いません。「理科」とか「地歴」なら言うことなし、いやいや「音楽」や「体育」、さらには「家庭科」ならば、なおのことよい。クラスで3番だったなら、「次は1番を目指そうよ」「うまくいけばこの科目、学年トップ10に入れるかも」が、正しい提案です。
得意科目をさらにさらに勉強していくと、学習の仕方がわかってくる。いや既にうまい学習の仕方が掴めているのかもしれない。それをきっかけにして、自ずからその学習法を他の科目に適応できるようになる。しかも、ある科目が逸早く受験レベルに到達すると、受験勉強の的をますます絞ることができます。心に余裕が出てくるわけです。
得意科目がある受験生は最後の最後に強いです。どれもこれも平均的な成績の受験生は高いレベルの大学を目指す場合、最後に躓きます。苦手な科目、嫌いな科目は最後に廻す。どうか、得意な科目、好きな科目がもっと得意で好きになるように、最大限の支援をしてあげてください。それでうまくいかなかったら…? そりゃ、プロに任せましょう、いや私のことですけど。